マティス、ドガ、セザンヌ、モネを知れる短編小説『ジヴェルニーの食卓』原田マハ(集英社文庫)

原田マハ

原田マハさんの『モネのあしあと』を読んで、モネの庭園と助手でありモデルである娘の話が書いてある『ジヴェルニーの食卓』を読みました。
https://soraichiblog.com/?p=890
マティス、ドガ、セザンヌ、モネと僕が好きな印象派の時代を生きた4人の巨匠と関わった関係者や巨匠を通して4人の人生を知れる物語となっており、とても贅沢な短編小説でした。
視点が本人でなく、画家に関わった人々の視点で描かれてあるのが新鮮でした。
また、ピカソやメアリー・カッサと有名画家たちの視点もあり4人の画家だけでなく他の画家のことも知れました。
絵画が画家に興味を持てる作品で、前提知識なくとっかかりとしていい本だと思いました。

以下で4つのストーリーの感想等を書いていきます。

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●美しい墓

語り手マリアが話すアンリ・マティスの話です。

なぜ、語り手マリアはインタビューを受けているのか、語り手マリアとマティスとの関係はなんでしょう。戦争があった時代。新悦な芸術家、パブロ・ピカソとアンリ・マティスの友情。心温まる話。そして、マグノリアルの花。全てが優しい愛に満ちた温かい話でした。

個人的に、ピカソの最後のマティスに対する態度がとても感動しました。

マグノリアルは花の種類です。キーワードとなるマグノリアルの花は何か、ストーリーの中から見つけ出してください。

【本ストーリーに出てきた作品】
 アンリ・マティス『マグノリアルのある静物』(1941)
 パブロ・ピカソ『ゲルニカ』(1937)
 パブロ・ピカソ『血のソーセージのある静物』(1941)
 パブロ・ピカソ『ドラ・マールの肖像』
 アンリ・マティス『ダンス』
 パブロ・ピカソ『冬の風景』
 アンリ・マティス『生きる喜び』
 アンリ・マティス『ヴァンスのロザリオ礼拝堂「生命の木」』

●エトワール

エドガー・ドガの話です。
マダムメアリー・カサットという老婦人がドガがなくなったら1年後の1918年のドガの回顧展に足を運ぶ。メアリー・カサットはアメリカ人の女性画家で美術検定のテキストにもでてくる人物です。アメリカとの架け橋となった人物で、印象派の発展に欠かせない人物です。

メアリー・カサットがなぜ画家になったかの説明や彼女が初めて7歳でパリに行った時の風景やなど、メアリー・カサットのことだけでなく当時のパリの様子が知れるストーリーでした。当時のバレーの少女たちの置かれた生々しい話は、非常に印象深く、貧困の現実を描こうとするドガの強い意志を感じることができます。

そんな印象派に欠かせないメアリー・カサットがどのような影響をエドガー・ドガから受けたのか。友人エドガー・ドガの創作秘話。エドガー・ドガの絵画に込めた思いを知るけどができます。

【本ストーリーに出てきた作品】
 エドガー・ドガ『障害競馬ー落馬した選手』
 エドガー・ドガ『十四歳の小さな踊り子』※唯一の彫刻作品
 エドゥアール・マネ『草上の昼食』

●タンギー爺さん

ゴッホの絵画『タンギー爺さん』画材屋のタンギー爺さんポール・セザンヌへ描いたタンギー爺さんの娘ジュリアン・タンギーからの手紙を通してセザンヌ、ルノワール、ゴッホ、ベルナールを知ることができます。この時代の画家の中心にはセザンヌがいます。なぜセザンヌ「近代画の父」と呼ばれるのか。なぜそれほど慕われているのかがわかるストーリとなっています。当時の画家たちの熱意や置かれた状況がわかるのも勉強になりました。

【本ストーリーに出てきた作品】
 ピエール・オーギュスト・ルノワール『陽光の中の裸婦』
 セザンヌの幼い頃からの友人である作家エミール・ゾラ『居酒屋』『ナナ』『制作』
 フィンセント・ファン・ゴッホ『タンギー爺さん』1887
 ポール・セザンヌ『サン・ヴィクトワール山の風景画』『リンゴと静物画』『トランプをする人物画』

●ジヴェルニーの食卓

クロード・モネの話です。

ブランシュ・オシュデ・モネというモネの娘(厳密にはモネのパトロンであったオシュデの娘で母アリスがモネと再婚し娘になり、モネの長男ジャンと結婚する)を通してモネを知ることができます。

画家でもあり、モネのモデルでもあり助手でもあるブランシュは以下の引用のようにジヴォルニーで総合的にモネの身の回りの整備をしていたと言われています。

ブランシュは、料理や家事、庭仕事の監督、帳簿の管理、モネの仕事のマネージメントなど、実家でもあるこの家の一切を仕切っている。

『ジヴェルニーの食卓(集英社文庫)原田マハ』

晩年のモネとモネと初めて会った11歳の頃部屋はモネの絵が多く飾れていた。少女が助手になったきっかけやパトロンとなった父の話は新鮮で面白くもありました。オランジュリー美術館になぜ睡蓮の連作があるのか。その裏で老友、ジョルジュ・クレマンソーがどう影響してたのか知らない話ばかりで好奇心を掻き立てられました。

以前紹介した『モネのあしあと』を読んでから読んだので前段がわかり、理解しやすかったですし、あの時の話はこういうことなのか!という発見もありました。何より良かったのはセーヌ川が凍った場面で背景を知っていて、そこに描写が重なったことで凄い感動をすることができたことです。

あと、食卓の話がたくさん描いてあり、素敵な朝食をモネの庭で食べたいなと思いました。

【本ストーリーに出てきた作品】
 クロード・モネ『睡蓮装飾画』
 クロード・モネ『印象 日の出』
 クロード・モネ『七面鳥』
 クロード・モネ『ダリア』
 クロード・モネ『モンジュロンの池』

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