1番好きな絵が題材 『楽園のカンヴァス』原田マハ(新潮社)

原田マハ
そらいち
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そらいちで〜す!

今回は、私が大好きな絵、『夢』アンリ・ルソー作が題材となった小説、『楽園のカンヴァス』原田マハ(新潮社)を読みましたので、感想を書きたいと思います。


楽園のカンヴァス(新潮文庫)
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あらすじ

とうとう、みつけたわね。
ルソーの名画に酷似した一枚の絵。そこに秘められた真実の究明に、二人の男女が挑む。興奮と感動の傑作アート・ミステリ。山本周五郎賞受賞。
ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに籠めた想いとは――。

Amazon内容紹介より「https://www.amazon.co.jp/楽園のカンヴァス-新潮文庫-原田-マハ/dp/4101259615#productDescription_secondary_view_div_1666951878508」

絵と一番対話できるのは監視員

コレクター以上に、もっと名画に向き合い続ける人もいるな。誰かって?ー美術館の監視員だよ。

『楽園のカンヴァス』原田マハ(新潮社)より

田舎の美術館の監視員をしている早川織絵が思い出した会話です。

確かに、美術館に行くと作品を見れるところに座っています。主に監視業務等が仕事だと思いますが、お客さんがいない時に作品をじっとみる機会は多そうです。

コレクターは手元にあるからたくさん見るとは思いますが、何時間も見るという人は稀でしょう。毎日、8時間くらい接している監視員には負けると思います。

この文を読んで、美術館に行くと監視員さんがなにをしているかとか観察するようになり、新しい視点ができました。

アンリ・ルソー

フランス出身で1844〜1910年の66年を生きたナイーヴ・アート(素朴派)の画家です。
※19世紀から20世紀に伝統的な美術教育とを受けず制作された作品税関職員の傍ら独学で学び絵画を描いた「日曜画家」であり、「税官吏ルソー」とも言われています。

ルソーが生きた時代は、1855年クールベの個展開催や1863年マネの『草上の昼食』によるスキャンダル、1847年第1回印象派展、1884年アンデパンダン展というように僕が好きな西洋美術史の中で一番変動があり重要な時期を生きています。

官展やサロン中心だった審査で落選したことに抗議して、会費さえ払えば誰でも出品出来る無審査の展覧会として、『アンデパンダン展』としてスーラやシャニックが中心に創設されました。
ルソーもこの展示にしています。
この門徒が開かれたことによりルソーも作品を笑われたりしますが、世の中に出ることができたのは、重要な点だと思います。

個人的には、ここまで注目されるので構図や色使いについては、ルソーはしっかり理解していて美しく見えるようしっかり描いていたのだと思います。

私が好きな絵画を上げろと言われたら、ゴッホの『夜のカフェテラス』ルソーの『夢』をあげます。

『夢』は、パッとみた時に美しいと思います。ジャングルの中に、ソファがありそこに横たわる裸婦。猛獣が草陰から見ているが襲う気配もなく、裸婦も恐れた表情がなくポーズをとっています。実際あったら危機的状況でしょうが、何か神秘的な絵になっています。

ルソーの絵は以下のものがよく見ますし、有名だと思います。
本当に独特ですが、いい絵が多いです。
技術的なことはわかりませんが、なぜか落ち着くしホッとする絵です。
『戦争』(1894)
『私自身、肖像=風景』(1890)
『眠るジプシー女』(1897)
『蛇使いの女』(1907)

読後感想

作品に出てくる古書の文体が美しく、本当にルソーの生活をルソーとして擬似体験できるくらい没入感があり、油彩の匂いや部屋の風景やヤドヴィガに合った時の高揚など気持ちがわかる文でした。

また、ルソーという人物をヤドヴィガやその夫やピカソを通して考えや生き様が伝わってきました。

ヤドヴィガの心の変化

ヤドヴィガがルソーと接し、夫やピカソからルソーの話を聞くことで、彼女の気持ちがどんどん変化していきます。そうした心の変化も本小説の楽しみの一つです。

永遠を生きるというピカソの言葉

「それであんたは、永遠を生きればいい」『楽園のカンヴァス』原田マハ(新潮社)より『永遠を生きる』は、本書のキーワードだと思います。『夢』もルソー自身が永遠に夢を見て、そして、ヤドヴィカその中で永遠に生きる。そんな素敵な絵の背景なのかなと納得し、さらに作品が好きになりました。

絵の構図

実際にルソーの『夢』を見るとなぜジャングルの中にソファーがあり、その上に女性が裸でいるのかと疑問に思いました。なぜこんな構図にしたのか?どんな思い出そうしたのか…その一つの答えが小説を読むことでわかった気がします。その答えは、やっぱり素敵で輝いて心温かいものでした。

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