婚活を通した現代版『高慢と偏見』ー『傲慢と善良』辻村深月

辻村深月さんの「傲慢と善良」は、本書にも書いてありますが、イギリスの女性作家であるジェーン・オーティンス作『高慢と偏見』の現代版と言える小説です。イギリスの階級社会での恋愛模様を描いた小説である『高慢と偏見』は主人公エリザベスがダージーに対して偏見などを持ちながらも惹かれあっていく小説で、エリザベスの姉妹の恋愛や母親の介入など階級や男女の高慢さや偏見を通して恋愛を細かく描写している小説です。

『傲慢と善良』も婚活という1つの題材を通して、「都会と田舎」「過保護と放任」など婚活や家庭内の決めつけで高慢さがでたり親の高慢さや善良な子供など現代ニュース番組等で見たことがある問題を記述しています。

人間の複雑な感情や葛藤を描写する力に優れており、婚活をしていてもしていなくても男性目線や女性目線での内面の葛藤は、私たち自身の内なる声や思いと響き合い、真の善良さと傲慢さを考えさせられます。

辻村深月さんは、繊細で緻密な文章で登場人物たちの心情を描き出す才能に長けています。彼女の本はまだ2冊しか読んでいませんが、恐らく凄い取材等されており細かい描写、特に人間の心理的なところを描かれるのがうまいと思います。読めば一人の女性の成長を通じて、自身の生き方や人間関係について考えさせられるでしょう。

正直、本書のジャケットの女性が物憂げな表情に魅力を感じて書いましたが、なぜ彼女はいなくなり、何を思っているのか考えながら読むと面白い本だと思います。

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